消費増税と金利上昇の「ダブル駆け込み」に期待

日本銀行は7月31日に開いた金融政策決定会合で、これまで0~0・1%程度に誘導していた長期金利について、0・2%程度まで上昇を容認する方針を打ち出した。日銀が金利上昇を容認するのは2016年9月以来1年10ヵ月ぶり。長期金利の指標である新発10年国債の利回りは、住宅ローン金利に大きな影響を与えることから、道内住宅業界にも「ローン金利の上昇による駆け込み需要」に期待する声が出始めた。

来年10月の消費増税による駆け込み需要が徐々に顕在化してきた中で、来年3月までに受注戸数を増やしたい住宅会社にとって、ローン金利の上昇がさらに追い風になるのは間違いない。

日銀が16年1月にマイナス金利政策を打ち出して以降、住宅ローン金利は過去にない低水準で推移。「そのうち上昇に転じる」との予測も根拠が薄く、住宅営業の最前線では不確定な金利情報を顧客に提供することができなかった。一部の大手ハウスメーカーからは「低金利の長期化がマイホーム需要層の腰を重くしている」と指摘も聞かれた。今回の日銀の政策変更によって、住宅ローン金利の上昇を示唆する根拠が示されたと言える。

住宅ローン金利の上昇はどの程度の負担増につながるのか。住宅金融支援機構の長期固定金利ローン「フラット35」の返済プラン比較シミュレーションを使って試算した。「借入金額3000万円、借入期間35年、元利均等返済」を共通要件に、借入金利を8月の最低金利と同じ年1・34%(①)と、上昇を想定した年2・0%(②)で比較すると、総返済額は①の3759万9095円に対し、②は3857万9007円と約100万円、1年間に換算すると約3万円増える計算。元利均等返済の場合、返済当初は金利分の返済割合が多いため3万円以上の差になる場合もある。1年間に納める消費税は人によって異なるとはいえ、ローン返済額の増加分は2%の増税分より負担感が大きい。

同機構が4月に発表した市場動向調査結果によると、「今年度は昨年度に比べ住宅が買い時」と回答した一般消費者は47%と半数近くを占めた。その理由(複数回答)は「消費増税前の駆け込み効果」が72%で最も多く、「住宅ローン金利が低水準」(43%)、「金利先高感」(36%)と続いた。金利先高感は前年に比べ12%も高い。一般消費者も「そろそろ金利が上がりそう。低金利のうちに」と考えていたことが垣間見える。

一方、民間金融機関の多くは10年以上の固定金利商品のローン金利を長期金利と連動させているため、道内で利用率が高い「3年固定特約」ローンは長期金利上昇の影響を受けにくい。ただ、3年固定特約の利用者は低年収の若年層が多いため、むしろ消費増税による駆け込み需要が期待できそう。

ローン金利の上昇はまだ確実とはいえず、期待半分の面もあるが、今年の秋商戦は「消費増税」と「ローン金利上昇」のダブルの駆け込み需要を巡って、激しい争奪戦が繰り広げられることを期待したい。