企業の取組みに期待 「応急危険度判定士」

胆振東部地震から1ヵ月が経過し、ようやく日常生活を取り戻したように見える一方で、今も多くの人たちが避難所生活を強いられている。本格的な冬を前に、仮設住宅の完成が急がれる。

今回の地震では、液状化現象によるとみられる家屋の被害がクローズアップされた。札幌市清田区里塚地区では、地震発生翌日の9月7日に被災建築物の応急危険度判定が行われ、対象となった建物に判定士が次々と赤(危険)、黄(要注意)、緑(調査済)の3種類のステッカーを貼っていた。

応急危険度判定は、1995年の阪神・淡路大震災を機に国内で初めて実施された。道内では2003年9月の十勝沖地震で釧路市が行って以来、今回が2回目。

避難所に行ってから貴重品を取りに自宅に戻る人もいるため、建物の危険度を知らせる判定は命に関わる重要な活動だ。逸早く被災地に駆け付けた判定士は第1号の災害ボランティアとなった。

道のまとめによると、今回の地震で、札幌、北広島、むかわ、安平、厚真の2市3町で、合わせて813棟の応急危険度判定が行われた。うち「危険」は約2割、問題がないことを示す「調査済」は6割、「要注意」は2割だった。調査済のステッカーを貼られた住宅については、所有者と同様、建築会社も安堵していることだろう。

今回の判定では108人の判定士が53班に分かれて活動した。札幌市と北広島市は市職員、3町は道と北総研、北海道開発局の各職員が現場に向かった。道内には2768人の判定士登録者がいるが、その数は99年の5240人をピークに減り続けている。道内はこれまで大きな地震がほとんどなかったため、「危険度判定に対する認識が薄れている」と指摘する関係者も。5年ごとの更新講習を受講せずに登録を抹消されるケースが多いうえ、登録講習と更新講習は個人的に休暇を取って受講しなければならないことも減少要因の一つといえそうだ。

判定活動は基本的に手弁当である。道の担当者は「ガソリン代から食費まで自腹。地震の発生個所が多く手が回らない状況にならない限り、民間の判定士には頼めない」と本音を明かす。今回、札幌市内から厚真町に向かった判定士は、信号が消えた道路を必死に走ったという。判定対象の建物にはできるだけ近づかず、ステッカーも素早く貼るなど、身の危険を顧みない勇気も必要だ。

応急危険度判定を行う範囲は市町村が決めるが、「向かいの家が判定を受けているのに、どうして自分の家は対象外なのか」と詰め寄る住民もいるという。前述の担当者は「時間を掛けては応急でなくなる。どこで線を引くかは早急に決める必要がある」と強調。「応急危険度判定はあくまで情報提供の一環。調査ではないことを理解してほしい」と釘を刺す。

今回の地震をきっかけに注目度が高まった応急危険度判定。その活動は個人的なボランティアの枠を超え、企業として判定士を増やす取組みが増えることを期待したい。