新設着工 前年並みの3万6千戸が上限?

2019年の道内の住宅業界はどのように展開するのか。先行きの悪化が懸念されるアメリカ経済や国内の株価、住宅ローン金利など、マクロ的な動向も注視する必要があるが、まずは顧客管理を徹底し、足元を固めたいところ。

昨年を振り返ると、年初に多くの業界人が予想していた着工戸数の増加は期待外れに終わった。貸家の落ち込みは予想されたものの、持家が当初予想に反して伸び悩んだ。職人不足やそれに伴う労務費の上昇、宅地不足などは今年も住宅市況に影響を与えそうだ。

今年は、10月1日に予定されている消費税率引き上げの影響が大きなキーワードになる。

ある地場大手住宅会社は、年明けから、建売住宅の購入者を対象に、棟数限定のキャッシュバックキャンペーンを行っている。申込みが限定数を超えて抽選になった場合、外れた顧客に他の自社所有地を紹介し、注文住宅を建ててもらう狙いもあり、消費増税に伴う3月末の経過措置を念頭に置いた営業手法といえる。

別の地場大手も、ローコスト商品の発表に合わせ、11日からプレゼントキャンペーンを行う。

国は消費増税後の住宅需要の落ち込みを防ぐため、住宅ローン減税の控除期間延長やすまい給付金の拡充、省エネ住宅ポイント制度の創設など、相次ぐ需要平準化策を打ち出した。ただ、増税後のマイホーム取得にメリットがあるのは、一定以上の所得水準の客層に絞られそうで、前述のキャンペーンも若年ファミリー層を主要ターゲットにしたもの。「消費増税前の駆け込み需要はまず若年層から顕在化する」という「定説」が今年も証明されるだろう。

今年のゴールデンウィークは10連休という、これまで経験したことのない長期休暇となる。天皇陛下の退位と皇太子の天皇即位という慶祝行事に伴う熱気が住宅需要につながるか、期待しつつも予断はできない。

一方、主要都市圏の宅地不足はますます深刻な状況に陥るだろう。増税後のメリットを求める顧客に「増税後は希望の土地が見つかるか分かりません」と釘を刺すことによって、契約を早める営業手法が効果を発揮しそうだ。

省エネ住宅ポイント制度の効果が期待されるのがリフォーム市場。工事は雪解け後の4月から本格的にスタートする。現行税率が適用される9月までの売上げを確保するため、大手ハウスメーカーなどは年明け早々からイベントを開催して需要喚起を図る。

道内の新設住宅着工戸数を予測すると、持家は消費増税によってある程度の駆け込み需要が期待でき、前年を3%程度上回りそう。貸家は投資向け物件の減少がそのまま着工戸数の減少につながるだろう。分譲住宅は一戸建(建売住宅)が順調に増えるとみられ、共同建(分譲マンション)も大型再開発物件の着工によって前年を上回りそうだ。

今年の全住宅着工戸数は、ほぼ前年並みの3万6000戸が上限と推計される。