重苦しい雰囲気が続く道内の持家市場

道内の持家着工戸数が伸び悩んでいる。1~9月の累計戸数は8325戸(前年同期比1・9%減)で、1月からの累計は2月以降初めてマイナスに転じた。8月と9月はいずれも、月別の住宅着工戸数を確認できる1980年以降で最も少なかった。

今年の持家市場を占うキーワードの一つだった消費増税前の駆け込み需要は、着工戸数をみる限り期待外れと言えそうだ。「増税はまた延期されるかもしれない」「住宅ローン金利は当面上がらない」など模様眺めを助長する材料が多かった。期待を持たせたまま要望だけが先行している住宅ローン減税の控除期間延長と新たなポイント制度の設置に至っては年末まで決まりそうにない。

工事最盛期の8月、9月の着工戸数が伸びなかった要因の一つが職人不足による工期の遅延である。春先に始まった建築工事が8月までに終わらない現場が相次いだ。建材メーカーの多くは住宅着工時期と自社製品の出荷時期のタイムラグを読んで先々の売上げ計画を立てている。例えば石膏ボードは着工から2ヵ月、キッチンは3ヵ月など。国交省が発表する住宅着工戸数がベースになるが、ここ数年、そのタイムラグが一定でなくなっている。「とくに今年はその傾向が顕著に現れている」(大手建材メーカー)。

戸建用地不足も着工の足を引っ張る要因の一つ。全道の持家着工戸数の32%(17年)を占める札幌市内では、年明け以降に札幌市の開発許可を得た50区画を超える大型分譲宅地は手稲区の2ヵ所のみ(11月20日現在)。戸建用地に適した大型の土地は入札によって売却され、資金的に余裕のある大手ハウスメーカーなどが落札し、建築条件付き宅地として分譲するケースが多い。地場ビルダーや工務店は市場に出回る流通物件に頼らざるを得ず、その流通物件も情報量に勝るハウスメーカーや建売専業の住宅会社に持っていかれる状況が続いている。

宅地不足は地価の上昇につながっている。大手ハウスメーカーなど8社が手稲区前田地区で計画している113区画の宅地分譲は1区画あたりの売値が1500万円近くになりそう。上物を合わせると4000万円を超える物件も。

一方、1~9月の建売(分譲一戸建)住宅の着工戸数は前年同期比7・7%増と好調だ。同じ立地でも注文住宅に比べ割安感があることや、最近の若年層は打ち合わせが面倒な注文住宅を避け、完成したカタチが分かりやすい建売住宅を選ぶ傾向が強まっていることが着工増の背景にある。

今後の市場動向はどうなるか。北海道住宅通信社が運営するインターネットサイト「北海道住宅データバンク」によると、今年1~9月の戸建注文住宅の建築確認戸数を道内主要7圏域別にみると、前年同期を上回っているのは札幌圏と室苫圏のみ。札幌市内に限るとマイナスだ。今年は台風や地震によって物流網が混乱したが、その影響はまだ一部に残っている。道内の持家市場は重苦しい雰囲気のまま年末を迎えそうだ。