道建築技術協会がフォーラム開催

「サスティナブル建築には外断熱化が有効」

(一社)北海道建築技術協会は1月25日、「サスティナブル社会における建物の戦略的維持保全に向けて」と題するフォーラムを札幌エルプラザで開催した。北海道住宅・建築生産体制強化推進協議会との共催。

パネルディスカッションも実施
パネルディスカッションも実施

北海道大学大学院工学研究院の羽山広文教授が「修繕積立金の確保と外断熱改修の実現―資金計画・エネルギー消費量・室内環境―」と題して基調講演。羽山氏は11年前、自宅マンションで全26戸の合意で、修繕積立金の確保を目的に電力契約を従来の低圧受電から高圧一括受電に変更した取組みや、2年前には外断熱改修を行った事例を紹介。

高圧一括受電の導入のメリットとして、「全電力料金が約45%低減し、差益の一部を修繕積立金に繰り入れでき、管理組合会計としても貴重な財源の一つになった」と述べ、「初期投資の回収は当マンションで約4年掛かったが、100戸だと単年度で回収できる可能性もある。規模が大きなマンションほど効果は大きい」と語った。

また、外断熱工法による大規模修繕により、「改修後は10月から翌年5月の平均暖房用エネルギー消費量が10戸平均で6・8%削減し、室温は2・2℃上昇、約16%の省エネとなった」と紹介。所有者全戸の経済的負担を強いることなく修繕積立金を増やすために、「他にどんな方法があるかを管理組合で考え、外断熱の普及に役立ててほしい」と強調した。

北海学園大学工学部の足立裕介准教授は「既存建物における外断熱の有効性に関する各種調査」をテーマに講演。足立氏は同協会内の特定専門委員会である「外断熱耐久性調査委員会」の委員長を務めており、活動の一環として外断熱建築物の耐久性に関する調査を実施。乾式密着工法、乾式通気層工法、湿式密着工法の3仕様それぞれの外断熱経過年数など、約1年半にわたる調査で、断熱材試料採取等を含む詳細調査を2棟、目視・指触調査を9棟行い、「躯体の耐久性が高く、室内温度は一度暖まると冷めにくい外断熱の有効性を改めて確認できた。今後も調査を通し、より適切な維持管理システムの構築等に役立つ資料を提供したい」と話した。

道建築技術協会の西川忠理事をコーディネーターに、パネラーには講演した羽山、足立の両氏と日本建築家協会北海道支部の遠藤謙一良支部長、日本ファシリティ特別事業部の森久保良希部長を迎え、パネルディスカッションを行った。

西川理事は「サスティナブル建築の有力な答えの一つが外断熱化であり、特に官庁施設で実践し、リードしてもらえるよう、政策的に国を動かすべき」と締めくくった。