分譲MS、貸家ともに減少

本道の住宅業界 2019年下期 市況予想天気図

年間新規供給、1500戸割れも

札幌市内の新築分譲マンションの販売価格は、依然として高止まり状態が続いている。

DGコミュニケーションズの調べによると、今年1~6月の新規物件の平均価格は3901万円で、前年同期(3902万円)とほぼ変わらない。職人不足による労務費の高騰の影響もあって建設費は下がらず、マンション用地も不足感が広がっている。地下鉄沿線などの好立地は売値が上昇しており、年間平均価格は4000万円を超える可能性もある。

このため、各デベロッパーは下期も新規事業に慎重な姿勢を保たざるを得ないと見られ、市場規模が再び拡大する可能性は少ない。

北海道住宅通信社の調べによると、今年7月以降に同市内で売り出される予定の分譲マンションは29物件、合計2107戸。前年同期に比べ、物件数はほぼ同数だが、戸数は651戸(44・7%)多い。これは、100戸以上の大型物件が5件と、前年同期(1件)に比べ5倍に増えたことによる。このうち4件は再開発事業に伴うもの。

最も戸数が多いのは、大京、住友不動産などが販売する「ザ・グランアルト札幌苗穂ステーションタワー」(東区北5条東10丁目)の300戸。JR苗穂駅から空中歩廊で1分。27階建の超高層マンションで、下期の話題になりそう。ただ、大型物件の全住戸のうち、年内に売り出される戸数が少なければ、年間の新規供給は、2年ぶりに1500戸を割り込む可能性も出てきた。

販売手法は、全住戸を複数回に分けて売り出す「分期分譲方式」が下期も主流になりそうだ。完売した第1期分の価格をベースに第2期の発売戸数と価格を決めるのが目的だが、あるデベロッパーは「発売戸数は各期とも10戸以下に抑えるしかない」と、低迷する市況にあきらめ顔。

下期も、購入層は個人事業主や夫婦共働き世帯などに限られ、一般のファミリー層には手が届かない状況が続きそうだ。

年間着工は2万戸割れ確実に

今年1~5月の本道の貸家の新設住宅着工戸数は5854戸(前年同期比21・7%減)で、過去6年間で最も少なかった。下期も毎月、前年を下回る状況が続くと見られ、年間着工戸数は前年の2万99戸を大幅に下回り、11年(1万5965戸)の水準にまで減少する可能性もある。

札幌市内の中堅ビルダーは、「土地情報は毎日のように入ってくるが、どれも高額で手が出ない」という。「地下鉄徒歩圏ならば、狭小地でも1Kや1LDKのプランを増やすことで7%程度の利回りは確保できる」ものの、利便性の高い土地ほど値上がりしており、「融資を受けられるのは、土地所有者と土地を現金で買える人だけ」と指摘する。

金融庁が全国の金融機関に対し、アパートなど不動産向け融資の引き締めを指導していることも投資向け物件の減少につながっている。

札幌市内のある金融機関は、「審査基準は変えていないが、投資向け物件の融資申込み件数は確かに減少している」と説明する。

札幌市内では地価の上昇地点が増え、建築費も高騰している。家賃相場は変わらないため賃貸物件の収益率がダウン。投資家に賃貸経営の企画を持ち掛ける不動産業者などは姿を消しつつあり、「(土地所有者からアパート建築を受注した)建築会社からの融資案件が目立つようになった」という。

一方、土地所有者のアパート需要はほぼ一巡し、既にアパートを経営している"リピーター"も「今は2棟目、3棟目の建てどきではないと考えているようだ」(旭川市内のビルダー)という。

下期に増えそうなのが老朽アパートの建て替え。戸建住宅や分譲マンションは高値で手が届かない若年層は、家賃が多少アップしても新築アパートや賃貸マンションに移る傾向が強まると見られ、建て替えによって新たな収益物件となることが期待される。