期待と懸念が並走? 「すまい給付金」

国土交通省は8月29日、来年度(平成31年度)の税制改正要望を公表した。

住宅に関する主な項目として、来年10月1日に予定されている消費税率10%への引き上げを踏まえた住宅取得対策のほか、空き家の発生を抑えるための特例措置の拡充・延長、買取再販住宅の取得に関する特例措置の拡充・延長などを要望している。

注目したいのが消費増税を踏まえた住宅取得対策である。

国交省は要望の概要の中で、「前回の消費税率引上げ時に住宅に係る駆け込み需要とその反動減が生じた」ことから、10%への税率引き上げに際し、「税制措置及び財政措置を含めた総合的かつ十分な対策を講じる」と、需要変動の平準化に向けた対策を検討している。

既に決定済の対策として、①住宅ローン減税の拡充措置の継続②贈与税の非課税枠の大幅拡充③すまい給付金の拡充―の3点を挙げている。

①の住宅ローン減税は、毎年の住宅ローン残高の1%を10年間、所得税から控除する。最大控除額は消費税の5%から8%への増税時(2014年4月1日)に200万円から400万円(一般住宅の場合)に引き上げられており、10%にアップした後も同じ措置が継続される。

②は、現在は最大1200万円の非課税枠が、消費税10%が適用される物件については最大3000万円に引き上げられる。もっとも、道内で父母や祖父母から1000万円を超える贈与を受けて住宅を取得するケースは少なく、①と同様、旨みは薄い。

最も効果が期待されるのが③のすまい給付金である。消費税率が8%の現在は、年収510万円以下の施主を対象に最大30万円が給付されているが、10%に増税後は、年収の上限が775万円以下に引き上げられるとともに、給付額も最大50万円に拡充される。

あるベテラン営業マンは「年収500万円以下の施主は大半が給付金をもらっている」と証言する。ただ、施主から申請書類の作成を頼まれても、「こっちが失念していたりして万一、給付されなかった場合は値引きにつながりかねない」とあって、「制度を紹介するだけ」と言う。ただ、増税後は年収の上限と給付額が引き上げられるため、「駆け込み需要が期待外れに終わる可能性もある」と懸念する。

あくまで目安だが、消費税が8%の現在は、年収425万円以下の給付基礎額が30万円なのに対し、10%に増税後は、年収450万円以下で50万円に拡充される。

すまい給付金は、住宅ローン減税だけでは増税による負担感を軽減できない所得層に対する救済策として、前回の増税を機に創設された。ただ、制度の創設が発表されたのは、増税の経過措置が終わる13年9月30日のわずか3ヵ月前の6月26日だった。

今回も「直前に何らかの負担軽減措置が打ち出されるのではないか」という期待感があるとすれば、それこそが、駆け込み需要を払拭しかねない。