寸言乱言(667号)

料理研究家の星澤幸子さんの講演会を海の幸の豊富な町で聞いたことがある。星澤さんは「『食』は『人』を『良くする』と書く。良い人を創るには食を整えることが大事」と語り、日本食の素晴らしさを伝えていた。

これを「住まい」に置き換えて考えてみた。「住」は「人」が「主」(あるじ)と読める。

米国人作家マーク・トウェインの小説「トム・ソーヤーの冒険」は、トムという腕白少年が主人公だが、作中ではトムの親友で宿無しのハックルベリー・フィンという自然児が人気者として異彩を放つ。1980年代初めのテレビアニメ版「世界名作劇場」では、彼が巨木の上にツリーハウスを建て、周囲の憧れの的となる姿が描かれた。

住まいには脇役をも引き立てる力があるということか。「良い住宅を造るには何を整えるべきか?」。この答えは読者諸氏と共に考えよう。「住宅も、人を良くするもの」であってほしい。(K)