寸言乱言(711号)

▽「設計の標準化」を提唱する建築家の伊礼智氏の講演を聴く機会があった。標準化は規格化と違って住宅建築業界では比較的新しい概念といえる。伊礼氏によると、各部位を標準化し、繰り返し改善することで心地よい空間が生まれる。建物全体の「規格化」とはまったく異なる話である。
▽規格化された住宅は大量生産に向いている。それに対し、伊礼氏は「設計の標準化は少量生産」と言い切る。どちらも省力化につながるものの、
目的が違うのである。
▽「規格」はルールであり「規格外」が存在するが、「標準」は「代表、平均」などの意味で「標準外」とは言わない。工務店が設計を標準化すれば、大手の規格化に対抗できるのではないかというヒントを得た気がした。
▽建築費を下げる方法は、①同じものをたくさん作る②材料を安く仕入れる③工期を短くする――などが代表的だが、それらには「心地よい空間」という尺度は残念ながら入っていないのである。