人材不足に対応!! 施工現場を効率化
生産性向上による増益が人手不足解消の鍵
■「人手不足倒産」
リストラや人員削減といった単語に慣れ切った世代には、「人手不足倒産」は、隔世の感があるだろう。近年、人手不足による倒産が増加している。
東京商工リサーチによると、2018年に人手不足関連の倒産は全国で387件(前年比23%増)に上る。
19年も上半期だけで191件と前年を上回るペースで人手不足関連倒産が増加している。特に求人難、従業員退職による倒産の増加が著しい(図①)。
北海道労働局が発表している「職種別、求人・求職・賃金状況」よると、19年8月の有効求人倍率は「型枠大工、とび工」が8.52倍、「大工・左官」が4.87倍だった。全職業平均の1.22倍と比較すると建設業における人手不足感の強さが分かる(図②)。
道内の住宅会社からは、受注は取れても協力業者の人手不足で工事が進まないという話が聞こえてくる。
「基礎が着工出来ないので工事が進まない。やっと見つけた業者の言いなりの金額を払うしかなく、粗利が下がっている」(道内注文住宅会社社長)1980年に93万人いた大工は、15年には35万人に減少。30年には21万人になるとも言われる。原因は大工の高齢化と新規就業者の不足だ。
北海道住宅通信社では毎年、道内で戸建注文住宅を手掛ける工務店にアンケート調査を実施しているが、15年から18年の4年連続で、最重要課題は「職人不足と高齢化」だった。職人の高齢化が進むのは確実で、人材の需給逼迫は益々深刻になる。
■低賃金が最大要因
職人不足の原因は、高齢化だけではない。実は、低賃金・低待遇が原因だ。
全建総連北海道建設労働組合連合会の「2018年度賃金等生活実態調査」によると、道内大工の平均年収は354.8万円(平均年齢49.4歳)であり、大工が今一番望むことは「雇用の安定化」や「労働時間の短縮」を退けて「賃金の引き上げ」である(図③)。
当然ではあるが、低賃金・低待遇の職場で働きたい人は少ない。自社の人手不足を「建設業は人気がないから」と、業界に責任を押し付けてはならない。
HR総研「2019年卒学生就職活動動向調査」によれば、新卒の学生が最も就職したい業界ランキングで、建設業は26業界中、文系学生で2位、理系学生は8位だ。決して人気のない職種ではない。
業種に関わらず、人手不足は中小規模の企業や労働条件が悪い企業に顕著だ。
リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査」によると、近年の売手市場といわれる新卒採用においても、従業員5000人以上の企業では求人倍率は0.42倍に下がっている。300人未満の企業の求人倍率8.62倍と対照的である(図④)。
これまで見てきたのは、低賃金・低待遇の儲からない会社が人手不足に陥る、という非情な現実。
少しばかり残業を減らしたところで、人手不足は解決しない。経営者に求められるのは、生産性向上による増益と、それを社員の待遇改善に振り向ける経営改革の覚悟だ。
経営者にその覚悟があれば、生産性向上をサポートするツールや工法が必ず見つかるだろう。