宅建業法改正の効果は「?」 建物状況調査

今年4月1日に改正宅地建物取引業法が施行され、宅地建物取引業者は既存住宅の売買仲介に際し、媒介契約書に「建物状況調査(インスペクション)」(以下、建物調査)の斡旋の有無を記載しなければならなくなった。建物調査を行った場合、調査結果は同法に基づく重要事項説明の対象となる。

建物調査は不動産業界と建築業界の連携強化につながると期待されるが、それぞれの思惑にはまだ開きがありそうだ。

本州系大手不動産業者の多くは改正法施行前から建物や設備に関する調査を無償で行っており、4月以降、その一環として、売主の了解のもと、築30年以内の戸建住宅を対象に法律上の建物調査を行っている。

地場不動産業者は、「取引物件があれば(講習を修了した)知り合いの建築士を斡旋する」(江別市内の不動産業者)ものの、大手に対抗するために、1件あたり3万~5万円の検査料を自己負担せざるを得ないケースも出てきそうだ。

改正法の施行から間もないこともあって、「調査結果は2週間待ち」(大手不動産業者)という。早期に仲介を成立させて手数料収入を得たい不動産業者の中には、「建物調査によって売上げが減るのでは」と懸念する声も聞かれる。

同法に基づく建物調査は、国が登録した団体が実施する既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士が行う。各団体とも今後、講習を継続する予定で、調査技術者が増えるのは確実だが、どの程度の売主や買主が建物調査を希望するかは未知数だ。

建物調査はあくまで売主が希望した場合に限られる。買主が希望しても売主が了解しなければ媒介契約書に「斡旋なし」と記載される。不動産業者の中には、調査による手間を省くため、売主に「(建物調査を)斡旋はしますが、調査しなくても売れます」とアドバイスするケースや、買主から建物調査を依頼されても「売主は調査しないそうです。購入しないなら買いたい人は他にもいるので」と釘を刺すなど、建物調査の認知度と実施率の向上という法律の目的と逆行する事例も懸念される。

法に基づく建物調査は、①構造耐力上主要な部位②雨水の浸入を防止する部分③耐震性に関する書類の確認―の3点を非破壊で行う。天井裏や床下は「目視」でよく、隠れた瑕疵は検査の対象外。調査項目を厳格化すれば建物調査そのものの普及が遅れるとの見方もあるが、「見えない部分にこそ瑕疵がある」(札幌市内の一級建築士)のも確かだ。

不動産業者が建物調査技術者を「下請け」とみなし、調査費を安値で発注すれば、調査の質そのものが問われかねない懸念も出てくる。

ある不動産業者は、「最近の既存住宅は建物調査の有無より、リフォーム済みかどうかで売れ足が決まる」と指摘する。「建物調査済だから安心」という認識が一般ユーザーに浸透し、「だから高くても売れる(買う)」という時代を迎えるには、まだ多くの時間を要するといえそうだ。