おぴにおん 【住宅産業の視軸】

不透明な下期の住宅市況年間着工は減少へ

5月18、19の両日、札幌市東区のスポーツ交流施設「つどーむ」で開かれた「住まいと暮らしのフェア」(北海道新聞社主催)。2日間で1万人を動員する道内最大規模の住宅フェアに出展した地場住宅会社は、次々とブースを訪れる来場者の対応に追われた。それは4月以降、道内住宅業界で見られた数少ない「明るい光景」だった。

今年も半年が過ぎ、住宅建築会社や問屋・販売店、工事会社など業界関係者の多くは市況の不透明感を肌で感じている。

「年明け以降、5月まで出荷量が前年を上回っていたが、6月から減り始めた」(札幌市内の建材問屋)、「モデルハウスの来場者が4月から少なくなった」(大手ハウスメーカー)など、下期に向けて不安を募らせる声が聞こえてくる。

消費増税に伴う駆け込み需要はあったのか、下期の住宅市況は、どのように展開するのか。

政府は、景気の落ち込みを防ぐ目的で、住宅ローン減税の3年延長、住まい給付金の拡充など、増税後の住宅取得者を対象に数々の支援策を打ち出した。

あるハウスメーカーは「所得が低い若年層ほど消費税に敏感」(地場大手)と感じている。前回(2014年4月)の消費増税の際も、真っ先に動いたのは若年層だった。前年5月の大型連休明けから、多くの子ども連れがモデルハウスを見て回る光景が見られた。しかし、今回は政府の支援策によって、需要が先送りされてしまった感が否めない。消費増税に伴う駆け込み需要は確かにあった。だが、それは前回とは比較できないほど少なかったといえるのではないか。

ある中堅ビルダーは、支援策について、「知っている人もいるが、契約時期に影響はない」(同)と、需要の平準化を指摘する。

1~5月の道内の一戸建住宅の新設着工戸数は前年同期比13・8%増と好調だ。増加要因の中には増税前の駆け込み需要も含まれるかもしれないが、多くは前年から検討していた顧客が契約に至ったことによる増加といえる。業界関係者が感じている6月以降の不透明感は、その反動減によるものだろう。

一方、共同建の1~5月の新設着工戸数は前年同期比22・9%で、大幅な減少傾向が続いている。金融機関による不動産向け融資の引き締めや、主要都市での供給過剰感が貸家需要を減退させている。分譲マンションも、再開発による大型物件はほぼ着工済とあって、下期に増える要因は見当たらない。

今後も土地不足と職人不足は続くだろう。札幌圏では江別市や石狩市に若年層が流出する傾向がさらに強まり、建築現場では、基礎工事を終えたまま誰もいない光景も散見されそうだ。

19年の新設住宅着工戸数は、共同建が2桁台で減少し、一戸建も上期の貯金を取り崩す結果、合計は前年(3万5888戸)を6%程度下回り、15年(3万3776戸)の水準まで落ち込む可能性も出てきた。