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「長期優良住宅」10年見直し迫られる認定制度


「長期優良住宅」10年見直し迫られる認定制度


 

今年6月に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されて10年となることから、国土交通省は有識者による「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」(以下、検討会)を昨年11月から今年6月までに7回にわたって開催し、長期優良住宅制度の見直しを検討している。

長期優良住宅制度は、従来のスクラップ&ビルド型から、長期にわたり良好な状態で使用できるストック活用型社会を目指すことを目的に創設された。

しかし、2017年度の全国の長期優良住宅(一戸建)の認定実績は10万5080件で、同年度の一戸建住宅着工戸数に対する割合(普及率)は24・6%にとどまっている。本道は2126件で、新設着工戸数に対する割合は15・2%と全国より低い。これは、長期優良住宅を標準仕様とする大手ハウスメーカーのシェアが、本道は全国平均に比べ少ないのが理由といえる。

北海道住宅通信社が16年11月に道内の主要10市の認定件数を調べたところ、15年度の普及率は北見市が22・1%で唯一20%を超え、最も低い釧路市(9・5%)を除く8市が10%台だった。

長期優良住宅については、住宅ローン減税の拡充や登録免許税、不動産取得税の優遇などメリットがある反面、耐震等級2を満たすための構造計算や、特定行政庁などによる技術的審査に要する費用が建設費のコストアップにつながりかねないデメリットも指摘されている。

長期優良住宅の技術的審査は書面審査のみで、実際に建てられた住宅の現場検査は行われない。つまり、「長期にわたり良好な状態で使用」できる保証はないのである。今後は技術基準がほぼ同一の住宅性能表示制度との連携や、事務手続きの簡略化なども求められる。

さらに、認定基準の一つである「維持保全計画」も普及を妨げる要因といえる。国の検討会は「30年後の維持管理に対応できるか不安で、長期優良住宅に取り組めない事業者が多い」との中小工務店の意見を報告書にまとめている。

道内では、国の補助事業である地域型住宅グリーン化事業(長寿命型)を利用する目的で長期優良住宅認定を取得するビルダーや工務店が多い。実際に、ある民間確認検査機関の担当者は「長期優良住宅に関する相談は大半が国の補助金と関連している」と証言する。その補助金を取得するビルダー・工務店の顔ぶれはほぼ限定されているのは今や業界の常識である。

一方、16年度の増築・改築の全国の認定実績100件のうち道内は66件でダントツの1位。1戸あたり200万円を限度に補助金が交付される長期優良住宅化リフォーム推進事業に取り組む特定のビルダー・工務店が、複数の認定を得ていることが背景にあるとも考えられるが、既存住宅の買取再販事業が拡大する中で、リフォームによって長期優良住宅認定を取得する事業者が道内でも増えることを期待したい。