記者の眼(第677号)

今年で連載開始50年を迎えた漫画「男一匹ガキ大将」。本宮ひろ志さんの初期の代表作だ。「少年ジャンプ」(当時)に連載された作品で、関西の少年・戸川万吉が全国の悪餓鬼たちを束ね、政財界をも席巻するけんか漫画。この作品に「昭和ハウス」という中小工務店が登場するのをご存じだろうか。

同社は戸建住宅を1軒あたり30万円で建てられるという新建材を開発する。「木や金属でもない。軽く強く、溶かせば自由に細工できる」とPR。「残るは耐久性の問題」として、房総半島にある岬の突端に2階建のモデルハウス1棟を建築。大型で強い台風16号の暴風雨に耐え得るかを実験する場面さえ描かれる。

漫画世界を想起させたのは、9月6日の胆振東部地震の発生と、前後して本道に上陸した2つの大型台風だ。「人に一番安らぎを与えるのが家」「一生かけて安い家の商品化が夢」との社長の情熱がガキ大将の心をつかんだ。

実験は彼らの活躍で無事に成功。新建材で経営を立て直す同社。後に万吉の地元は大火に遭うが、同社の無償の住宅建築支援で復興となる―。(K)