《特集》コスパで選ぶマッチングサービス


コロナ禍の3年間で住宅会社の集客手法は大きく変化した。というよりも、家づくりを始めるユーザーの行動パターンや考え方がコロナ以前までとは大きく変化し、それに対応できない住宅会社は顧客を獲得することが難しくなったという方が実態に近い。


ユーザーは事前にインターネットで十分に下調べし、自分の嗜好や希望条件に合った住宅会社を絞り込んだ上で問合せや資料請求を行う。


こうしたユーザーを自社へ導くための重要な導線となっているのが、リクルート(東京都)が運営する住宅情報総合ポータルサイト「SUUMO」。全国のユーザーに絶大な知名度と影響力を持つが、それと比例して住宅会社がサイト上に情報を掲載するためは高額な費用が必要となる。


大手ハウスメーカーなど、ページ上位に表示される住宅会社は月額数百万円を費やしているといわれるだけに、そこから1、2件の成約があっても利益にならない。しかしこの2、3年で道内でもSUUMOに掲載する住宅会社が一気に増えたため、ただ掲載するだけでは競争率が高くて反響につながらず、投じた費用が無駄になる可能性も高くなる。


現在、道内住宅市況は厳しい冷え込みの真っただ中。資材価格の高騰で高くなりすぎた住宅に購買層の動きがこれまでになく鈍化しており、住宅会社の集客に大きく影を落としている。


近年は道内でも多種多様なマッチングサービスが誕生し、ユーザー数や登録住宅会社の拡大を図っている。SUUMOとは規模的に比較対象とはならないが、登録料や掲載料は無料で、完全成果報酬型のサービスも多く、無駄なコストが発生しない点では「やってみて損はない」とも言える。


今特集で取り上げるものがすべてではないが、それぞれ特色の異なるサービスの概要を理解し、あるいは複数のサービスを組み合わせて活用することで、伸び悩む集客の新たな一助となることも期待される。


以下、現在道内で展開しているマッチングサービスのいくつかについて概要と特徴を紹介する。登録住宅会社数は取材時点のエリア検索該当数による。



SUUMO


国内最大級の住宅・不動産情報のポータルサイト。賃貸、分譲、中古、戸建、マンションまで全国のあらゆる住まいに関する情報を網羅している。新築戸建注文住宅は住宅会社とモデルハウス、イベント情報などを掲載。ユーザーはさまざまな詳細条件で候補を検索し、サイト内のフォームから資料請求や問い合わせを行う。


特徴:担当のサポートスタッフが付いて、ユーザーからの反響が得られやすいように掲載内容などをアドバイスする。情報の掲載件数やプレミアム表示、動画掲載など多様なプランがあり、より多くの費用をかけるほど目立つ上位部分に掲載される仕組み。






リプラン住まいナビ


住宅雑誌リプランを発行する札促社が新たにスタートさせたWebサイト型のマッチングサービス。データベースに保存された約4600点の住宅写真からユーザーが好みのテイストの写真を選択していくと、AIがそのユーザーの好みに合った住宅会社を診断し、候補として表示する。ユーザーがそこから資料請求や問い合わせを行い、独自のチャット機能を使った匿名の相談もできる仕組み。


特徴:好きな写真を選ぶだけという直感的な操作で手軽に楽しみながらマッチングを行うため、ユーザーにとっての敷居が低い。住宅会社に発生する費用についてはさまざまなプランがあり、内容によって異なる。具体的な金額は非公開。






イエコネ


Webサイト上で住宅オーナーが自宅の写真を公開し、これから家を建てたいユーザーがそれを見て見学を申し込むCtoCの住宅見学マッチングサービス。住宅会社は見学に立ち会わず、実際に住んでいるオーナーが自宅の魅力をユーザーに伝える。住宅会社の登録と物件情報掲載は無料。見学1回ごとに費用が発生し、成約時には成約報酬を運営会社に支払う仕組み。


特徴:住宅写真の撮影、公開、PR文章の作成もすべてオーナーが行い、見学もオーナーとユーザーの間だけで完了するため、住宅会社はモデルハウスも営業マンもWeb担当も必要ない。見学時と成約時以外は費用が発生しないため、無駄なく効果的なプロモーションが可能。






いえズーム


Webサイト上に新築住宅の事例を掲載する。ユーザーは事例を見て気に入った住宅会社にサイト内のフォームから問い合わせる。イベント、モデルハウス情報も掲載できる。 初期参加費用10万円、以後、月額3万円で企業ページと年2本の住宅事例記事を掲載する。新規写真の撮影にはカメラマン代3万円が別途必要。


特徴:業界新聞である北海道住宅新聞社が運営しており、同社のスタッフがオーナー宅を取材して住宅事例を作成する。さまざまなテーマのコラムコンテンツも充実。作成された住宅事例は無期限掲載で、住宅会社ごとの専用ページもあるため、セカンドサイトとしても利用できる。






houzz


世界最大級の家づくりとインテリアデザインのプラットフォーム。Webサイト上に住宅事例やインテリアなどの写真と企業プロフィールを掲載する。それを見て気に入ったユーザーがサイト内のフォームから問い合わせる。専門家一覧に基本情報を掲載するだけなら無料。専門ツール「houzz Pro」の利用料金(月額)は「ミニマム」が7000円、「スタンダード」が1万2000円。


特徴:米国を拠点として世界10カ国に6500万人以上の登録ユーザーがいる。2500万件以上の事例が掲載されており、エリアに応じた検索が可能。幅広いユーザーが気に入った写真をクリックするだけで専門家とつながれる手軽さを強みとしている。感度の高い顧客層が集まりやすい。






おうちの相談窓口



店舗の相談窓口を訪れたユーザーに対面式で家づくりのアドバイスを行い、登録された住宅会社のうち条件に合う1社から数社を紹介する。無料相談会なども行いユーザーのすそ野を広げている。住宅会社の登録は無料。成約ごとに費用が発生する仕組みで、金額は非公開。


特徴:札幌市東区の大型商業施設アリオ札幌店、イオン札幌元町店に店舗を構え、幅広いユーザーを集客している。新築以外にリフォームや外構、土地活用の相談も行っている。





アウカ



すべてオンラインで完結する非対面型のマッチングサービス。コーディネーターが電話でユーザーの無料相談に答え、希望に合った住宅会社を紹介する。


特徴:完全非対面で相談ができることを強みにコロナ禍で実績を伸ばし、全国で展開エリアを拡大している。ポータルサイト「アウプロ」は無料で登録住宅会社を紹介しているほか、相談なしで仲介だけを行う「アウカダイレクト」、LINE集客をサポートする「アウカ来店プラス」などのサービスもある。





ハウスリンク



店舗の相談窓口を訪れたユーザーに対面式で家づくりのアドバイスを行い、登録された住宅会社のうち条件に合う1社から数社を紹介する。無料相談会なども行いユーザーのすそ野を広げている。登録は無料で、成約時に費用が発生する仕組み。金額は住宅の受注額によって異なる。


特徴:店舗は札幌市厚別区。新築以外にリフォーム・リノベーションやインテリア、エクステリアの相談なども行っている。成約以後もユーザーの家づくりを継続的にきめ細かくサポートする。





住まいの相談窓口「むすぶ」



アドバイザーによる店舗窓口での無料相談をベースとしながら、オンライン相談にも対応。登録されている中からユーザーの希望に沿った住宅会社を紹介する。無料相談会やセミナーも定期的に開催している。


特徴:札幌市西区と豊平区にカフェ併設の2店舗を展開。土地の紹介なども含めたワンストップ相談サービスを行っている。新築以外にリフォーム・リノベーションや中古物件売買の相談などにも対応。