建設業チャレンジ支援センター講演会

左官・挾土秀平氏 ものづくりの喜び語る

建設業チャレンジ支援センター主催の講演会・セミナーが1月26日、アスティ45(札幌市中央区北4条西5丁目)で開かれた。第1部は特定社会保険労務士の遠藤起予子氏による「若年者の雇用と定着/強い会社づくり」をテーマとしたセミナー。第2部は左官職人の挾土秀平氏が「伝統文化の継承と新しき世界への挑戦~ものづくりへの思い」と題して講演した。

■長寿命企業の心得

遠藤氏は建設業界全体の大きな課題となっている人手不足の問題を取り上げ、休みが少ない、労働時間が長い、雇用が不安定、労働環境が厳しいなど、若年層が定着しない理由をデータに基づいて解説した。

その中で、5年連続で新卒採用を行い、離職者ゼロという札幌市内の建設業者の事例を紹介。「新卒の求職者は必ずホームページを見て応募してくる。近い年代の先輩の声を通して、会社の雰囲気や働きやすさが感じられる求人専用ページを持っている会社は若い人が集まりやすい」とアドバイスした。

また、せっかく入って来た人材の離職を防ぐために、会社としてのビジョンの明確化や、社内教育体制の充実、コミュニケーションが活発になる土壌づくりなどのポイントを挙げ、「会社の風土を作り上げるのは社長の仕事」と、長寿命企業の心得を説いた。

■文化の喪失に警鐘

挾土氏の講演は、これまで手掛けてきた作品や制作風景の写真をスライドで投影しながら、自身のものづくりへのこだわりや思いを伝えた。
挾土氏は家業の左官工事会社を退職して2001年に職人社秀平組を設立。土、砂、石灰、藁などの自然素材を生かした物語性のある壁を作り続け、アート分野にも積極的に活動の幅を広げている。NHK大河ドラマ「真田丸」の題字制作を手掛けたことでも知られる。

日本の左官職人の技術は「世界で群を抜いてトップ」と強調しながらも、高度成長期を通じて伝統的な文化や技術が失われ続けてきたことで「もう終わりかけている」と警鐘を鳴らした。
自身も高齢の職人から伝統の左官仕上げの技法「漆喰黒磨き」を教わったが、完全な形では伝わっておらず、「一度失われたものはもう取り戻すことができない」と文化保存の重要性を語る。

国内外で高い評価を受ける自身の作風について、「デザインの勉強なんかしたことがない。自分の職業の歴史や文化、アイデンティティーを深めていくことで、説得力のある物語が生まれてくる」と独自のスタイルを強調。
変化の激しい時代に「絶対に変えてはいけないものがベースにある。そのうえで変えるところは誰よりもぶっ飛んで変えていく。その方がドキドキして面白い」とものづくりの喜びを伝えた。