「民泊」は住宅業界の新ビジネスになるか

住宅の空き家などに宿泊客を有料で泊める「民泊」に関する新たな法律「住宅宿泊事業法」(以下、新法)が6月15日に施行される。道内では宿泊施設が不足しており、民泊事業の増加が見込まれる。住宅業界にも民泊を新たなビジネスにつなげようとする動きが活発化しそうだ。

新法は、民泊用の住宅を提供する家主などを「住宅宿泊事業者」、対象となる住宅を管理する業者を「住宅宿泊管理業者」、物件情報を提供し、サイトを通して予約などを行う業者を「住宅宿泊仲介業者」と定義。①住宅宿泊事業者の都道府県知事への届出②住宅宿泊管理業者の国土交通大臣登録③住宅宿泊仲介業者の観光庁長官登録―を義務付けた。

届出の受付が始まった3月15日から5月7日までに、道に提出された届出書は20件、相談件数は延べ459件。札幌市は届出が32件、相談は450件。いずれも正式な受理は6月15日以降だが、道の担当者は「法律が施行されれば届出が増えるのでは」と期待している。

届出された住宅は、台所、浴室、便所及び洗面設備が設置されていることが要件。住宅業界にとっては、それらの設備機器の取り換えや内装リフォームなど、新たな需要が期待できそうだ。建材メーカーの中には、民泊に関する情報を収集し、リフォーム需要の拡大につなげようとする動きもある。

民泊に使われる住宅には決められた「標識」を玄関等に掲示しなければならない。道も6月15日以降、届出を受けた住宅の住所と届出番号を公表する予定で、民泊用の住宅がどこに建っているかが一見して分かるようになる。

一方、民泊事業を行う側には様々な制限が設けられている。

新法は、民泊として宿泊させることができる日数を年間180日以内と定めている。

道は条例で民泊の区域や期間を制限しており、小中学校の出入り口の周囲100m以内では授業が行われる日に、住居専用地域などは年末年始を除く平日に民泊を実施できない。札幌市もほぼ同様の制限を条例で定めている。ただし、事業者(家主)が宿泊者と同じ住宅に住んでいる「家主居住型」で、かつ5部屋以内の場合は制限の対象外。家主が住んでいない「家主不在型」や、居住型でも6部屋以上の場合は、国交大臣に登録した住宅宿泊管理業者に管理を委託しなければならない。

この他、消防法や食品衛生法、下水道法など順守すべき関係法令は多い。

札幌市内のある町内会は、民泊事業で地域を活性化しようと、新法で制限区域が定められる以前から、不動産業者や飲食店、建築業者などが中心となって空き家の所有者確認や宿泊者に対するサービスなどの検討を進めたが、最終的に「民泊事業は難しい」との結論に至った。その最大の理由は、宿泊者による騒音やマナー違反などトラブルへの懸念だった。

民泊ビジネスは空き家対策と同様、地域に密着したきめ細かなニーズを把握することが第一歩といえそうだ。